児童労働を学ぶブログシリーズ「Child to Read」第二回目: 「日本でもある貧困による児童労働。中学生で働く子どもの摘発は年間270人。」

この記事の要約
“児童労働は、実は発展途上国の中だけの話ではありません。日本でも、児童労働は存在しています。7人に1人が「相対的に貧困」な日本で、貧困が児童労働の大きな理由の一つです。また、SNSの普及によって、簡単に求人にアクセスできてしまうという外的要因もあります。また、アメリカでは、20万以上の子どもが怪我や命の危険と隣あわせで働いています。児童労働は、他国の出来事ではありません。”
今まで取り上げてきた児童労働は、発展途上国の中だけの話ではありません。
日本やそのほかの先進国にも存在します。
それらの現場は、鉄鉱山、ダイヤモンド採掘場、ごみ山などではないかもしれませんが、高所得国における児童労働の数は200万人ともいわれています。
今回の投稿では、一般に公開されている他の関連団体からのデータをもとに、先進国および日本における児童労働の現状をまとめていきます。
児童労働とは?
児童労働とは、どう定義されているのでしょうか?
児童労働に当たるもの:
※1をもとに、筆者作成
日本の実情
日本のNPO団体ACEが報告した、日本における児童労働の現状によると、有害で危険な労働に従事していたり、15歳未満で労働をする児童が多くいます。※2
有害で危険な労働
2015年に有害で危険な労働に抵触されると判断されたものとして、
人身取引被害者 16人(強制売春等)
児童ポルノ被害者 905人
出会い系ビジネスと援助交際 1778人
JKビジネス 114 ←店舗数
建設業(労働基準法違反) 18 ←事業所の数
15歳未満の労働
上記のACEの報告書によれば、
15歳未満の労働 270人
もの事例があります。
具体例
桐生の建設業アルバイトをしていた中学生が下敷きになり死亡した事件によって、群馬県太田市の解体会社の社長が、足利市の中学校4校から、生徒20人を雇っていた、
ということが明らかになりました。※3
記事にもある通り、中学生が雇用されている現実も、信じがたいが存在しているという事です。
日本で子どもが働く原因は?
これらの原因としては、まずは貧困が挙げられます。いわゆる、相対的な貧困と呼ばれるものです。
厚生労働省の平成28年国民生活基礎調査によると、※4
日本では、一人世帯の可処分所得が年間122万円以下、二人世帯の可処分所得が172万5千円を下回ると、相対的貧困となります。
相対的貧困に当てはまる家庭は、全世帯の15.4%に上ります。
また、母子世帯の82.7%、児童のいる世帯の62%が「生活が苦しい」と答えています。
NPO団体ACEは報告の中で、日本の子どもの相対的貧困率に関して指摘しており、7人に一人の子どもが貧困であり、生活費を工面するために働く子どもも多いと推察しています。
この貧困という内的要因の他に、有害で危険な労働をさせる雇用主、またそういった求人に容易にアクセスできてしまうSNS、インターネットの普及化といった外的要因も日本の児童労働問題の原因の大きな一因となっていますとも報告しています。
また、貧困だけでなく、親からの虐待や親との関係不和による家出、学校への不登校、非行に走ってしまうというのも理由でだといいます。
他の先進国はどうなのか?
アメリカのケース
アメリカのNGOヒューマンライツウォッチによると(※5)、アメリカでは、20万人以上の子どもが、農村で働いていることが報告されています。途上国のケースと同様に、先進国でも農林水産業での児童労働が一番多くなっています。子どもたちは、穀物を植えたり、収穫したり、農薬を散布する作業を長時間行います。このような子どもたちが働くのは、へき地であり、監視が行き届かず、近くに学校もないような農村地域で児童労働は行われています。アメリカでは、学校さえ行けば、年齢の下限なく、時間の制限もなく農場で働いてもよいという法律があります。毎日33人の子どもが農場で怪我をし、多くの子どもたちが農場で命を落としています。安全対策も行われておらず、雇用主からは、「気を付けて」としか言われない現状があります。
今回の登校では、主に日本の児童労働における現状を紹介しました。中学生の子どもがアルバイト感覚で気軽に応募したり、高校生がポルノ関連の仕事をしていたりします。半数以上の世帯が生活が苦しいと答えている日本(※4)。貧困で子どもが働くという例は世界のいたるところで起きています。
参考文献
※1 ILO, International Labour Standards on Child labour, Geneva:ILO
https://www.ilo.org/global/standards/subjects-covered-by-international-labour-standards/child-labour/lang–en/index.htm (2021年2月22日参照)
※2 特定非営利活動法人ACE, 日本にも存在する児童労働~その形態と事例~, 2019年12月, 特定非営利活動法人ACE,
http://acejapan.org/wp/wp-content/uploads/2020/04/ACE_Report_Child_Labour_in_Japan(J).pdf
(2021年2月22日参照)
※3 日本経済新聞社, 社長「中学生20人雇った」群馬の死亡事故, 2012年8月9日, 日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXNASDG09035_Z00C12A8CC1000
(2021年2月22日参照)
※4 厚生労働省、平成28年国民生活基礎調査の概況、平成29年6月、厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa16/dl/03.pdf
(2021年2月22日参照)
※5 Margaret Wurth, Children Working in Terrifying Conditions in US Agriculture, New York:Human Rights Watch, https://www.hrw.org/news/2019/11/13/children-working-terrifying-conditions-us-agriculture
(2021年2月22日参照)