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児童労働のケーススタディ(インドの鉱山編)

Featured Photo taken by ILO Asia-Pacific, “Afganistan Brick Kiln Children”. Available on Frickr.

執筆:大川聖也


以前に児童労働の概要、日本に住む私たちができる事を書いてきました。
それでは、児童労働の内容が分かったことで、実際により詳しく、どのような児童労働の問題が起きているのでしょうか。

とりわけ南アジアの児童労働問題のケーススタディを、公に公開されている論文をもとに紹介していきたいと思います。

今回のインドの鉱山で働く子どもたちのケーススタディを紹介します。

このケーススタディの紹介記事は、インドの人身売買や児童労働に取り組むNGO、Impulse NGO Networkが行った、「An Exploratory Study of Children Engaged in Rat Hole Mining in the Coal Mines of Jaintia Hills District, Meghalaya」という記事をもとに製作しています。

 

ラット・ホール・マインとは?

インド、メガラヤ州、シロン、ジャインティアヒルズ(Jaintia Hills)という場所に、ラット・ホール・マイン(ネズミの洞穴のような鉱山)と呼ばれる鉱山があります。鉱石を採掘するために作られた、高さ60㎝くらいの無数の洞穴があることから、そう名付けられています。

貧困の為、インドの周辺州やネパール、バングラディシュ等の近隣国から多くの家庭が鉱山の採掘作業に従事するために移住してきます。その家庭の中には子どもも含まれ、中には子どもだけで働きに来る子どももいます。

現在70000人もの子どもがその鉱山で採掘作業をしながら働いているとされています。

劣悪な労働環境

彼らは低賃金で長時間重労働をして働き、鉱山で働くため有害な空気を吸ったことによる呼吸器系の疾患にかかるリスクを抱えていたり、鉱山が崩れ落ちたり、爆発したり、事故にあう危険と隣り合わせで働いています。

安全対策がなく、死んでも公にされず、長時間危険を冒しながら働かざるを得ない状況は、Worst Forms of Child Labour”最悪の形態の児童労働“に分類されます。

働く子どもたちからの聞き取り調査結果

Impulse NGO Networkは、Jantia Hillsにある多くの鉱山からランダムに選んだ10つの鉱山で働くランダムに選んだ200人の働く子どもから、出生や労働環境、就学状況などに関して聞き取り調査を行い、以下の現状が明らかになりました。

出生状況に関して

・全体の48%の子どもが14歳以下だった。年齢は一番低くて5歳で働いている子どももいるが、13歳から17歳の年齢層が一番多かった。

・2割はネパールから来ており、8割はインド国内の他の州(近隣のアッサム州等)から来ている子どもだった

・99%の鉱山で働く子どもは男の子だった

労働環境に関して

・仕事は、鉱山で鉱石を採掘する仕事や、それを運ぶ仕事、雑用の
仕事がある。地下の仕事では、鉱石を採掘し、それを地上に運ぶ。地上の仕事では、それを運び、鉱石を細かく砕いていく。・報酬は、地下の仕事をする子どもは一日250ルピーから500ルピーとなり、雑用の子どもの仕事の報酬は一日60ルピー。

・全体の39%の子どもは100ルピーから250ルピーの報酬を、33%の子どもは250ルピーから500ルピーの報酬をもらっている。

・報酬は時間ではなく、成果報酬で決まる。トレイに入った鉱石をすべて満たすと800ルピーの報酬がもらえる。この報酬をトレイに入れた労働者でわける。

・44%の子どもが7から9時間働く。23%の子どもは10時間から12時間働く。

・9割以上の子どもが、報酬を家族にあげている

・地上の仕事をする子どもたちは、2割の子どもが自分たちの仕事を危険だと思っている。一方、地下の仕事をする子どもたちは、8割の子どもが自分たちの仕事を危険だと思っている。

・いつ崩れるかわからない鉱山の60㎝くらいの高さしかない洞穴で、ヘルメットと懐中電灯、ピクセルだけで働かなければならない。だからこそ子ども労働者への需要がある。

・鉱石で汚染された空気の元働き、呼吸器疾患や皮膚病を患う子も多い。

・雇用主や上司から子どもへの暴力は頻繁に起きている。それによって死亡した子供も多数いるとみられている。今回の調査では、鉱山のオーナーが子どもを暴力で殺してしまった後、埋めて隠ぺいするように指示されたという報告も上がっている。

・地下に下るためには30~50メートル、竹で作られたはしごで下りないといけないが、安全装備がされていない為事故にあう事も多い。

・法が機能していない為、労働者が事故で死んでも、賠償金は下りない。労働者管理などもしていない為、死んだとしても家族に報告されない。

・近くに病院もない

 

就学状況に関して

・97%の働く子どもたちは学校に通っていない。通っていない子どものうち、7割近くの子どもは一度は学校に通ったことがあり、21%の子どもは小学校で中退し、36%の子どもは中学校で中退している。よって4割弱の子どもは、小学校を卒業している。

・働く子どものうち半数の子どもは、親から離れて働いている。

・親と来ていない子どもたちは、「仲介人」によって、この鉱山に連れてこられる。貧困家庭に宣伝し、子どもを鉱山で働くよう説得する。その際、具体的な仕事の内容は伝えられない。

・近隣には、お酒を売るお店やギャンブルができる映画館が立ち並び、働く子どもたちは、飲酒やギャンブルに染まる子が多い。

このように、現在も劣悪な労働環境かで家族のために働く子どもたちがインドのメガラヤ州にいます。1日300ルピーというと、日本円換算では500円くらいですが、大卒の給与が20000ルピー程度あればよいほうなので、日本の感覚で言うと3000円というところでしょうか。

13歳の子どもが、教育も受けれず、命や健康のリスクを取りながら、一日3000円に働いている光景を想像できますか?

解決策

Impulse NGO Networkは調査の中で、この児童労働問題への解決策として、
① シェルターを作り、子どもたちを保護する
② 親元に返すか、親元へ帰れない子どもたちに関してはシェルターに引き続きとどまり、教育を与えたり職業訓練を行ったりする
③ 社会福祉や労働問題の省庁と連携を深める

という事を今後短期的に取り組む課題としています。