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児童労働の子どもへの影響

執筆:大川聖也 

 

前回の投稿では、児童労働が起きる原因についてまとめてきました。 

今回の投稿では、児童労働が引き起こす結果についてまとめていきます。 

 

児童労働の引き起こす結果 

簡単にまとめると、劣悪な環境による身体的、精神的被害、子ども労働者への搾取、暴力や虐待、犯罪に巻き込まれる機会が増える、教育を受けることができない、といった問題が生じます。 

 

この投稿を読むメリット 

この投稿を読むと、児童労働が単に、子どもを搾取しているむごい行為なだけではなく、なぜ、どのように子どもたちにとって悪影響のあるものなのかが体系的にわかります。 

 

以下に具体的な説明と、各事例の具体的な証拠を示すため、論文から引用した調査結果を掲載していきます。 

 

1.劣悪な労働環境による身体的被害 

児童労働をすることによって、怪我や病気がより高い確率で起こり、時には死と隣り合わせになったり、また、望まない妊娠をしたりする場合があります。 

 

・感染症や健康被害 

1)2019年にインド、マハラシュトラ州チャンドラプル市内の30人のごみ拾いを生業としている人々を調査した研究※1では、彼らのうちウイルス感染による発熱を83.3%の人々が経験していました。ごみ収集の仕事は埃やごみで溢れ、猛暑の中働き、体力も奪われる中、呼吸器や傷口から細菌が入り、それによって病気になることがしばしばあります。彼らからは、感染症以外にも呼吸器、皮膚系、筋骨格系、消火器系、眼系の痛みが数多く報告されています。これは大人を調査したものでありますが、子どもたちにとっても労働環境は変わらず、同じ身体的被害を被っています。 劣悪な環境かで働いているため、※2)インドのバンガロールのごみ拾いを生業としている人々の平均寿命が39歳であるという報告もあります。 

 

 

・農薬による健康被害 

※3)ユニセフによれば、農業では、殺虫剤の使用を頻繁に行う為子どもたちの健康に悪影響を及ぼします。子どもは大人よりも殺虫剤の影響が強く、小児がん、運動能力の低下、神経発達障害、喘息、肥満、死産や流産などへの影響が報告されています。 ※4)世界の児童労働の約6割、およそ9800万人の子どもが農業セクターで働いているといわれ、児童労働がもたらすとても一般的な健康被害であるといえます。 

写真 International Institute of Tropical Agriculture 題名Field worker spraying cowpea with pesticide,  Flickr.com

 

・HIV感染 

また、性産業へ人身売買された子どもたちはHIV感染率が3割に上ります。※(5) 

インドの性産業従事者への調査によると、性産業で働く人々の16%はHIVに感染していました。そして、自発的ではなく、人身売買などによって無理やり性産業で働かされている人々のHIV感染率は34.3%でした。無理やり働かされている性産業従事者は逃げる場所もなく、顧客と避妊具をつける交渉がうまくいかない事が原因だと思われます。この調査をもとにすれば、人身売買で性産業に利用される子どもたちの3割はHIVに感染してしまうという事になります。 

写真 Evan Courtney, 題名"She Dances Promo Card" , Flickr.com

 

・望まない妊娠

人身売買で性産業で無理やり働かされる場合、上記に挙げたように避妊具をつけることがなく性交渉を強要される場合が多いです。アメリカの性産業における人身売買被害者を調査した研究では、7割の被害者が最低一度は妊娠を経験していること、55%の人が中絶を経験している、と報告しています。※6)

 

・命を落とす危険性 

アメリカのNPO, Child Labor Coalition によると、世界では100万人の子どもたちが鉱山で働いている子どもたちが100万人いると言われています。※(7) 

ガスの爆発等によって、鉱山での作業はとても危険が伴いますが、鉱山で働く子どもたちが多くおり、毎年多くの子どもたちが命を落としているのも事実です。  

 

2. 劣悪な労働環境による精神的被害 

上記のアメリカの人身売買被害者への調査では、インタビューされた現役性産業従事被害者のうち、ほとんど全員(98%)が何かしらの精神的問題を抱えており、うつ症状(89%)、フラッシュバック(68%)、罪悪感(82%)、PTSD(55%)や自殺未遂(42%)などに苦しんで言います。また、人身売買から抜け出した後もほとんどの人身売買被害者が苦しみ続けています。※6) 

写真 State Library of Ohio, 題名"child-sex-trafficking-in-united-states", Flickr.com

 

3. 子ども労働者への搾取  

子どもたちは交渉力もなく、弱い立場にあるため、概して法定最低賃金を下回る劣悪な労働環境で雇用されることになります。 ※子どもが必要とされるのは成人の労働者よりも安価に雇用できるからで、それが賃金を下げる一因になっています。※8) 

 

4. 暴力や虐待 

※多くの子ども労働者たちが、雇用主や顧客からの暴力を経験しています。物理的暴力だけでなく、言葉の暴力も含みます。また、虐待の為、衣食住や医療手当を十分に受けることができない子どももいます。特に、人身売買などで働かされたり、極度の貧困で働くしかなく逃げることができないケースに当てはまります。※8) 

 

5. 犯罪に巻き込まれる機会が増える 

特に都市部では、子どもが働く仲間と犯罪を犯したり、または貧しい子どもを狙うギャングが犯罪に誘う事も一般的です。※9) ナイジェリアの都市部の働く子どもたちに行った調査では、調査されたほとんどの子どもたちは窃盗をしたり、反社会的行為に参加するためにギャングから誘われたことがある、という報告をしています。 

 

6. 教育を受ける機会が失われる 

子どもが働く事で、その時間学校に行くことができなくなり、教育を受けることができません。その結果、大人になっても識字のできずまともな仕事に就くことができなくなり、貧困の負のループから抜け出せません。 

児童労働は、概して過酷な肉体労働です。※9) 長時間頻繁に歩くせいで、疲れや痛みが常にある。こういった疲れは子どもの出席率や遅刻、成績に影響しているという調査結果からもわかる通り、両立して養育を修了することはとても難しいです。 

 

このように、児童労働は、子どもたちに健康的精神的被害をもたらし、時には死の危険を招くこともあります。また、暴力や虐待、犯罪に巻き込まれる機会も増し、子どもは教育を受ける道を断たれることになります。 

 

ここまでお読みいただいて、ただ単に子どもが働いているだけでなく、どれだけ児童労働がひどい事か、わかっていただけたのではないでしょうか。 

 

一人ひとりがこの現状と向き合い、行動していくことで、全ての現状はすぐには変わらなくても、一人一人の子どもの現状を変えることはできるかもしれません。 

 

今後は、こういった子どもたちの現状を変えるべく草の根レベルで活動している非政府組織や株式会社等の社会的企業の取り組みを取り上げていきたいと思います。 

 

最後に、当団体では働く子どもたちの為に微力ながら、活動を行っております。世界全体の問題を変えることは難しいかもしれませんが、一人の子どもの未来なら変えれるかもしれない、という希望を持って活動しております。

児童労働問題の解決を支援していただけるサポーターを募集しています。

概要は下記からご覧いただけます。

私たちにできる事

宜しくお願いします。

 

 

参考文献 

※1) P. B. Dongre, and R. K. Kamble, Ragpicers Occupational Health Assessment In Chandrapur City, Central India, Sardar Patel College-Chandrapur,  http://www.ijbap.com/upload/ijbap-2019/17-ijbap-2019.pdf (11月22日アクセス)

※2)  Citizen Matters,  A website to help you to get help from ragpickers, Karnataka-Oovi Foundation, https://bengaluru.citizenmatters.in/a-website-to-help-you-to-get-help-from-ragpickers-bengaluru-6547 (11月22日アクセス)

※3) UNICEF, Understanding the Impacts of Pesticides on Children: A discussion paper , February 2018, Geneva-UNICEF, https://www.unicef.org/csr/files/Understanding_the_impact_of_pesticides_on_children-Feb_2018.pdf (11月22日アクセス)

※4) ILO, Child labour in agriculture, Geneva-ILO,  https://www.ilo.org/ipec/areas/Agriculture/lang--en/index.htm 

(11月22日アクセス)

※5) K. E. Wirth et al., (2013). How Does Sex Trafficking Increase the Risk of HIV Infection? An Observational Study From Southern India, American Journal of Epidemiol, 177(3), 232–241. doi: 10.1093/aje/kws338

https://academic.oup.com/aje/article/177/3/232/101069 (11月22日アクセス)

※6) L. Lederer, and C. Wetzel, (2014) The Health Consequences of Sex Trafficking and Their Implications for Identifying Victims in Healthcare Facilities, Annals of Health Law, Vol 23(1), 61-91  https://www.researchgate.net/publication/280947812_The_Health_Consequences_of_Sex_Trafficking_and_Their_Implications_for_Identifying_Victims_in_Healthcare_Facilities (11月22日アクセス) 

※7) Child Labor Coalition, Child Mining: 10 Facts, Washington DC-Child Labor Coalitoiin 

https://stopchildlabor.org/?p=3853#:~:text=It%20is%20estimated%20that%20around,under%20any%20circumstances%2C%20including%20poverty. (11月22日アクセス)

※8) ILO, Causes and Consequences of Child Labour in Ethiopia, Geneva-ILO, https://www.ilo.org/ipec/Regionsandcountries/Africa/WCMS_101161/lang--en/index.htm (11月22日アクセス)

※9) D. Togunde, and A. Carter, (2008), In Their Own Words: Consequences 0f Child Labor in Urban Nigeria, Journal of Social Sciences, Volume 16(2), Pages 173-181, doi: 10.1080/09718923.2008.11892615 https://www.tandfonline.com/doi/abs/10.1080/09718923.2008.11892615?journalCode=rjss  (11月22日アクセス)