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児童労働の原因

執筆:大川聖也

過去の投稿で、児童労働の人数や業種、定義や、最悪の形態の児童労働でどのようなことが起こっているのか書いてきました。

(ざっくりまとめると、児童労働は、子どもに対する経済的、性的搾取であり、教育の機会を奪うものです。また、健康や精神に害を及ぼし、場合によっては子どもたちが死の危険にさらされるものです。 )

今回、児童労働の根本的な原因と、その結果について、まとめていきたいと思います。 

児童労働の原因は、大まかにミクロとマクロの観点に分けることができます。  

ミクロレベルの児童労働の原因 

・貧困 

・家族関係の崩壊  

まず、児童労働の原因として直感的に思い浮かぶ原因が、貧困です。※1)貧困で生活するお金を捻出するために、子どもも労働力として働き手となっていたり、貧しいために学費や制服費、文房具が払えないケースです。また、子どもの人身売買に関して、※2)誘拐などのイメージが強い人身売買ですが、アメリカの人身売買の調査では、誘拐は実際は全体のケースの10%未満であり、実はブローカーが貧困家庭の少女に近づき、貧しい少女が自発的に人身売買および性風俗産業に入っていくことが報告されています。

もう一つが、家族関係の崩壊です。※3)インドの自分の経験したケースですが、実は貧困問題より、家族関係の崩壊、というのが実はより児童労働の大きな要因を占めているのではないかと個人的に思っています。もちろん国や地域、状況によるとは思います。

なぜそう思ったかというと、インドの自分たちの活動地域では、貧困層の中で、子どもが働いている家庭もあれば、同じくらいの世帯収入で、子どもは働いていない家庭もたくさんあるからです。

違いは両親の子どもに対する態度ではないかと思っています。

インドの経済学者、アマルティア・センは自由と経済開発という本で、「民主主義国家では飢餓は発生していない」という事を発表しました。※4) インドもしかり、経済発展著しい国で、たとえ貧困層だとしても、幼い子どももフルタイムで一緒に働かなければ空腹で死んでしまう、という事は、考えられません。そして、インドだけでなく、民主主義を採用していて、戦時中でない国であれば、同じなのではないかと思います。

だから、児童労働は子どもに対する育児放棄・虐待の一つである、と思います。

当団体のインドの活動地域では、こういった家庭がありました:

ケース1)両親が働いていて、二人の姉妹の子どもがいます。この姉妹は四六時中ごみ拾いをして働いています。

この子たちが働いたお金は、親が農村に送って、家を建てる資金にしていました。家を建てる資金を捻出するために、子どもたちが一日中働いていたのです。

ケース2)もう一つ、親は働かず、子どもたちが働いている、というケースです。この家庭は、父親がおらず、母親は働いていません。五体満足なのに、働こうとせず、代わりに、子どもを一日中ごみ拾いをして働かせています。自分たちが家庭を訪問すると見知らぬ男の人と寝ていた、という事もありました。

マクロレベルの児童労働の原因

 ・子ども労働者への高い需要

 ・質の良い教育へのアクセスがない

 ・社会的規範

  ・職業スキルを身に着ける事ができると思われている

  ・女子は学ばなくてもよいという認識

 ・法律的問題

  ・法律が施行されていない

  ・法律的例外 

 ・国会の経済力

 ・戦争や紛争

 

子ども労働者への高い需要

国際労働機関によると、※1) 子どもは大人より低賃金で働く事が出来、労働者の権利を主張したりせず、組合なども組まない為扱いやすい存在です。また、子どものほうがうまくいくタイプの仕事もあります。児童ポルノや性風俗産業、狭い空間で作業する鉱山での採掘作業などがそうです。子どもを雇用する需要が存在しています。

質の良い教育へのアクセスがない

※1) 質の高い教育へのアクセスがないことも、児童労働を発生させる要因となります。近くに学校がなかったり、まともな授業が行われていない学校しかなく、子どもを学校に送る意味がないと思われているケースなどがあります。

社会的認識

・職業スキルを身に着けることができると思われている

国によっては、子どもが働く事は悪くない、とみられているところがあります。開発途上国では、多かれ少なかれ、よくあることだ、と思われているとは思います。

例えば、※1)、エチオピアのような国では、実際に働きながら、仕事のスキルを習得するという意味で、子どもの時から仕事をすることはいい事だという社会的な規範もあります。

・女子は学ばなくてもよいという認識

また、女子は働かなくてもよいという認識が社会通念で存在します。当団体の活動地のインドでも、貧困層の中には女の子は10代で結婚する子が多く、社会で働く、というよりもすぐにどこかに嫁ぐ存在とみなされています。また、女子は家事をするもの、という通念もあり、学校に行かずに家事手伝いをしたり兄弟の面倒を見る子どもたちが多くいます。

法律的問題

・法律が施行されていない

例えば、14歳以下の児童労働禁止しているインドですが、当団体の活動地であるノイダでは、子どもたちがごみを集め、廃品回収業者に提供しています。廃品回収業者も子どもたちが集めているとしっています。しかし、これを取り締まるはずの警察や公共機関が機能していません。

・法律的例外

米アイオワ大学労働センターによると、児童労働を禁止する法律は多くの国々で施行されていますが、開発途上国の国々では「例外」を設けているケースがあります。※5) 例えば、1)ネパールでは、14歳以下の子どもの仕事は禁止していますが、農園と煉瓦づくりは例外、2)ケニアでは16歳以下の工業分野の労働は禁止されているが、農林水産業は例外、3) バングラデシュでは、最低労働年齢の決まりはあるが、家事使用人や農林水産業では規制を設けていない、等々

国家の経済力

※5) 国家が貧しいため、必要な資金を児童福祉に回すことができません。上記の、法律が施行されていない問題に関して、取り締まりを行うには警察や公共機関担当者を動員する必要があります。しかし、その予算がありません。また、海外の有償資金協力も負担を強めています。アイオア大学労働センターによると、マラウィは国のGDPの40%を海外ODAの返済に充てていながら、健康と教育部門に合わせても15%しか予算を割り当てられていません。

戦争や紛争

また、戦争や紛争では、兵士になったり、親を亡くして働く子どもたちが多くいます。紛争や戦争も、児童労働を発生させる原因となっています。

 

このように、さまざまな理由が複合的に絡み合い、子どもが働く事態が起こっています。

次回の投稿では、児童労働が引き起こす結果について、まとめていきたいと思います。

 

参考文献:

※1)ILO, Causes and consequences of child labour in Ethiopia, Geneva-ILO, https://www.ilo.org/ipec/Regionsandcountries/Africa/WCMS_101161/lang--en/index.htm(11月11日アクセス)

※2) Polaris Project, What We Know About How Child Sex Trafficking Happens, Washington, DC-Polaris, https://polarisproject.org/blog/2020/08/what-we-know-about-how-child-sex-trafficking-happens/(11月10日アクセス)

※3) ILO, Causes, Geneva-ILO, https://www.ilo.org/moscow/areas-of-work/child-labour/WCMS_248984/lang--en/index.htm(11月7日アクセス)

※4) アマルティアセン・石塚雅彦(編)、(2000年)、自由と経済開発、日経BPM

※5) The University of Iowa Labor Center, Causes of Child Labor, Iowa City-The University of Iowa, https://laborcenter.uiowa.edu/special-projects/child-labor-public-education-project/about-child-labor/causes-child-labor#:~:text=Child%20labor%20persists%20even%20though,limited%20prohibitions%20on%20child%20labor.(11月8日アクセス)