児童労働とは?国際的な定義とデータ

執筆:大川聖也
特定非営利活動法人エイド・フォー・チャイルド・トラストは、インドの児童労働問題の解決や子どもの貧困問題の解決に取り組むNPO団体です。
当団体はこれから児童労働の解決により重点的に取り組んでいきたいと思っています。ですので今後当ブログでは、とりわけ児童労働について重点的に取り上げていきたいと思います。
児童労働とは?
今回の投稿では、まず児童労働の概要から探っていきたいと思います。
児童労働という言葉をニュースで耳にしたことがある人が多いでしょう。でも、児童労働の正確な定義を、具体的に説明できる人はあまりいないのではないでしょうか?
幼い子が働く事?危険な場所で働いていくこと?子どもが働く、ってことは日本の高校生がマクドナルドでアルバイトしていたら、それは児童労働なの?そもそも明確な決まりなど有るの?
子どもが働く事(Child Labor)という言葉以上に、いろいろな背景が絡んでいます。
国際的な定義
児童労働とは、健康的、精神的に害があるものであるとともに学校に行く機会が奪われてしまうもの
児童労働の国際的な定義が発表されているので、見てみましょう。(※1)
国際労働機関によれば、児童労働とは、子どもの尊厳や可能性を奪うような、健康的、精神的に害のある仕事で
精神的、健康的、社会的、または道徳的に子どもたちに危険で害のあるもの、
または、
子どもの学校を妨げるもの、学校を途中で退学したり、学業を早期にやめてしまう原因となってしまうもの、学校に入っているが長時間重労働の作業に従事しなければならず学業に支障が出てしまうもの
と定義されています。
健康的、精神的に害があるものであるとともに学校に行く機会が奪われてしまうもの、といえそうです。なので、
外で仕事をしている子どもたち、お金を得ている子どもたちだけでなく、兄弟の世話をするために学校に行けない子どもたちも児童労働をしているという事です。
当団体の事業実施地域にも、兄弟の世話をするために、外出すらままならず、まして教育を受けることができないでいる子どもたちもいました。 下の写真の一番左側の子のムスカンは、兄弟の面倒を見たり家事をするために外出もままならず、学校にも行けずにいます。

年齢による定義
原則14歳以下は禁止だが、条件つきで12歳以上は可能。 15歳以上でも17歳以下であれば、有害な仕事はしてはいけない。
Minimum Age Cenvention (最低年齢条約)という条約が、1973年に国際労働機関によって採択され、児童労働に当てはまる具体的な年齢が明文化されました。(※2)
最低年齢条約によると、
・12歳(もしくは先進国では13歳)以下の子どもはいかなる仕事もしてはならない。
・12-14歳(先進国では13-15歳)の子どもは、軽微な作業以外は仕事をしてはならない。
※軽微な作業とは、健康や安全が脅かされず学業に支障がない範囲
・15-17歳 有害で危険な仕事(Hazardous work)はしてはならない。
したがって、あまり一般的ではないものの、日本においても13歳から15歳の子どもを、条件つきで雇用ができるようです。
”例外的に、中学生については、使用者がその所轄労働基準監督署長の許可を得れば、修学時間外に許可の範囲内で働かせることはできることとされています(労基法56)ので、新聞配達であればこの許可の対象となり得ます。”(※3)
児童労働の人数
世界の約10%の子どもが児童労働に従事しており、そのうち半数近くが5歳から11歳以下の幼い子ども
国際労働機関の2016年のデータによると、全世界で1億5200万人が児童労働に従事しています。これは世界の子どもの人口の9.6%を占めます。
5歳から11歳の子が48% 、12歳から14歳の子が28% 、15歳から17歳の子が24%
と、幼い子供が半数近くを占めています。(※4)
働く子どもはどこにいる?
働く子どもはの絶対数はアジアとアフリカに多い
アジアにおける2016年の児童労働に従事する子どもの数はおよそ620万人、アフリカにおける数は720万人で、働く子どもの絶対数はアジアとアフリカが最も多い地域となっています。(※5)
働く子どもの率はサブサハラアフリカの国々に多い
地域ごとで見るとアジアとアフリカはほぼ同数であるものの、各国の子どもの数のうち、働く子どもが占める割合がとりわけ多い国々は、サブサハラアフリカに集約しています。

※6. 出典: Esteban Ortiz-Ospina (2016) – “Child Labor”. Published online at OurWorldInData.org. ‘https://ourworldindata.org/child-labor’ (参照 2020-11-1)
働く子どもたちはどんな仕事をしているか
農林水産業が圧倒的に多い
国際労働機関によると、(※7) 児童労働は、仕事が多い都会にあふれている印象を受けますが、実は農村の農林水産業の中で多いという事がこのデータから明らかになりました。
2012年において、農林水産業における割合が全体の児童労働者の58.6%, 次にサービス業32.3%(そのうち家事手伝いが6.9%)、工業が7.2となっています。
工場で勤務していたり、路上で何かを売る子どもたち、レストランで働く子どもたちは我々でもニュースや現場を通して知っていますが、実は働く子どもたちのほとんどは農村にいる、という事が現状です。
農林水産業における児童労働
家族の中で働く直接報酬はない子どもたちが多い
国際労働機関によると、(※8)
農林水産業において、彼らは農業、漁業、林業、畜産業に従事しています。彼らのほとんどは家族で働く、直接報酬は受け取っていない労働力です。
農林水産業は、死亡者数や事故、仕事に起因する病気が多い業種です。
貧困や、近くに学校がない事、貧困層の人々が最新技術を持っていない事、危険な仕事ゆえに働きたいと思う大人の労働者がいない事、子どもも働くという、地域にみられる伝統等が原因であるとされています。
次回の投稿では、児童労働の「最悪の形態の児童労働」と「有害で危険な子どもの仕事」について取り上げていきます。
参考文献:
※1. ILO, ”What is Child Labour”, Geneva: ILO, https://www.ilo.org/ipec/facts/lang–en/index.htm (参照 2020-10-30)
※2. ILO, Global estimates of child labour: Results and trends, 2012-2016 – Frequently asked questions, Geneva: ILO, 2017, https://www.ilo.org/wcmsp5/groups/public/@ed_norm/@ipec/documents/publication/wcms_575604.pdf, (参照 2020-10-31)
※3. マイベストジョブ,「中学生でもできるバイトはある?法律ではどうなってるの?”」 , https://mybestjob.jp/tane/baito-chugakusei.html (引用 2020-10-31)
※4. ILO, Global estimates of child labour: Results and trends, 2012-2016, Geneva: ILO, 2017, https://www.ilo.org/wcmsp5/groups/public/@dgreports/@dcomm/documents/publication/wcms_575499.pdf, (参照 2020-10-31)
※5. ILO, Global estimates of child labour: Results and trends, 2012-2016, Geneva: ILO, 2017, https://www.ilo.org/wcmsp5/groups/public/@dgreports/@dcomm/documents/publication/wcms_575499.pdf, (参照 2020-10-31)
※7.ILO (IPEC), Marking progress against child labour – Global estimates and trends 2000-2012 / – Geneva: ILO, 2013.https://www.ilo.org/wcmsp5/groups/public/—ed_norm/—ipec/documents/publication/wcms_221513.pdf (参照 2020-11-1)
※8, ILO, “Child Labour in Agriculture”, Geneva: ILO, https://www.ilo.org/ipec/areas/Agriculture/lang–en/index.htm#:~:text=Worldwide%2060%20percent%20of%20all,labourers%20are%20unpaid%20family%20members. (参照 2020-10-31)